バスが止まって、みんないそいそと降りていく。何かと思うとトイレ休憩みたいだった。
次にいつあるか分からないのでオレも降りていく。
遅れてバスに乗り込むと他の乗客にはサンドイッチとクッキー、水が配られていた。
オレには何もくれなかった、みんなと違うテンポで行動してたから、渡したか渡してないか覚えてないんだろうと思い、ちょっとヘコみつつも、いいんだ、、、出発前に水2本とクッキーとパンは買ってるもんね。と自分を慰めた。
日本とヨーロッパの時差は約8時間ある。
日本が朝8時ならヨーロッパは深夜0時だ。
休憩が終わり、バスが出発して携帯で日本の旅行会社に電話を掛けた。
今、日本は朝9時頃だろう、もう繋がるはずだ。
担当の人はまだ出勤してなかったけど、とりあえず現状と乗れなかった列車の払い戻しができるかどうかと、これから先、イタリアでも移動が列車メインなのでストライキがどうなっているのかを調べて貰い電話してもらうことにした。
車内は後ろの学生の話し声でまたうるさくなった。
さすがにここまでくると若いからと思わず、他の客へのデリカシーがないのだな、と思った。
子供たちだって乗っているのにあまりの騒ぎように後ろに行き、下手な英語で「くわいえっと、おーけー?」と言うと、学生たちは注意されると思ってなかったのか一瞬キョトンとしたけど「オーケー、シーシー」と隣同士注意しあい、静かになってくれた。
言ってみるもんだなーと思いながら席に戻るった。
二度目の休憩のときに電話があり、ストライキは今日までだということが分かった。
今日はミラノから列車でベネチアに行かねばならない。
行けるか行けないか運だな、と思った。
外の空気を吸いにバスを降りる。
どこにいるのかも分からない。空気は冷たい。
今までは自分がどこにいるのか分かっていた。けれど今、もしバスが出発したらオレはどうするのかな?このままフラフラ歩いたらオレはどこにいけるのかな?と考えるとなんだか楽しくなった。
分かっていることは自分がここにいるということ。
何百年も前に外国を旅をした人はすごいと思う。
それは自分の意思ではなく、主からの命だったり嵐に合い仕方なかったものかもしれないだろうけど、けれども彼らは生きていた。そういうエネルギーを持ちたいなと思う。
朝4時か5時頃、バスが止まり男が2人乗り込んできた。
乗客のパスポートを確認している。警官のようだ。
ということはフランスを出たか、イタリアに入ったのだろうなと思う。
全員のパスポートを確認した後、客の一人の黒人の青年を連れて降りていった。
パスポートに不備でもあったのだろうか。
一眠りして起きると夜が明けていた。今日は曇りみたいだ。
買っておいたサンドイッチを食べる。
もうこの頃には香水の匂いは気にならなくなっていた。
適応力ってのはすごいなぁ
9時頃、バスが止まり半分くらいの客が降りた。
ミラノではないみたいだけど、たぶんここの駅で降りる予定だったのだろう、バスの係員の言葉が分からないので道路の標識を頼りにここがどこか判断するしかない。
道路標識にミラノと書いてある数が増えてきた、近いらしい。
そして11時、やっとミラノに着いた。
実に15時間バスに乗っていたことになる。さすがに座り疲れた。
バスはミラノ駅前に止まった。
駅は大掛かりな改修をやっていて色々なところに足場が立っていた。
ストライキ中だからだろうか、駅の中はどこと無く閑散としている、とりあえず今日中にベネチアに行かなければいけない。
どこかそれを聞ける係員はいないかと歩くとインフォメーションがあった、普段4〜5ある窓口が1つしか開いてないので、そこに行列ができていたけど並ぶしかない。
順番が来たので係員のおじさんにベネチアに行きたいこと、それとユーレイルパスを見せる。
おじさんは夜の8時までベネチア行きの列車は出ないと言い、パスに開始日時を書いてくれた。
ちなみにこのユーレイルパス、期日内は列車に乗る日付を自分で書き込むと使えるのだけれど、必ず駅員に使用開始と使用期限、それにスタンプを押して貰わないとパスを持っていても罰金を払わなければいけないらしい。
帰ってきて旅行会社の人と話をしていて分かったのだけど、オレは重大なミスをしていたのだ。
スペインの列車に乗っていたとき、ユーレイルパスとは別にバルセロナ〜マラガ等というチケットがあったので、それだけ見せて乗車していたのだけど、実はそれもユーレイルパスと一緒に見せなければいけなかったらしい。
それと知らずにスペインでは全くパスを見せずに全部の列車に乗り、咎められることも無かったのだから運がいいのか、それともEUの列車のシステムが複雑でスペインの駅員も気づかなかったのか、、、
まぁ、追加金をとられなくて良かったねと帰ってから旅行会社の人と話をしたのだった。
さて、話はミラノ駅に戻り時刻は昼の12時頃、ベネチア行きの列車は後8時間後、バスで15時間揺られたし、外も曇っていたので街を見て回ろうと言う気は無くなり、待合室の硬い木のベンチに腰掛け、出発前に買った分厚いクッキーを食べ、携帯でゲームをしたり、眠くなったらうたた寝をしたりしていた。
待合室に暖房はなく、薄ら寒くなってきたので目が覚めたのが4時頃。
少し歩いて暖まろうと思い、荷物を持ってホームに行くとなぜか「ベネチア」と行き先表示のある列車が停車している。
そのときは全身が?????になっていたに違いない。
掲示板を見ると夜8時にベネチアに行く列車と、そのプラットホームが出ているけど、そことは違う。
では、このベネチア行きの列車は何なのだろう。
車掌みたいな人がいたのでユーレイルパスを見せながら聞くと、乗りなよ!みたいなことを言っている。
インフォメーションのおじさんがウソをついたとは考えられないし、けれど後4時間も待つのはゴメンなので列車に乗った。
発車したのは5時過ぎくらいだっただろうか。
各駅では無いけど頻繁に止まり、お客が入れ替わっていく。
駅名は全く分からないので不安だったけど、ちゃんと確かめて乗ったのだから大丈夫、と自分に言い聞かせていた。
そんな中、一人の男が目に付いた。
彼は座席に座ると落ち着かない様子で周りをキョロキョロ見ていて、しばらくすると席を変え、また周りを見る。
一時間程でその男は降りていったのだけど、何だったのだろう?
もしかして無賃乗車をしていたのかな、と思った。
イタリアには改札が無い。列車に乗るには切符を買い、駅のホームにある縦30cm、横20cmくらいの黄色い打刻機に切符を通し日付と時刻を自分で刻印する。
たとえ切符を買っていても打刻をしていないと違反になるらしい。
その後乗った列車では、よく車掌が切符の確認に周っていたから改札がなくてもいい方法なのだろう。
けど、この日はストライキのためかベネチアに着くまで一度も車掌は来なかった。
あの男は無賃乗車をしていたから車掌が来ないか気にしていたんじゃないかなとアクアス教授は推理した。
そして夜8時半過ぎにやっとベネチアに着いた。
インフォメーションで地図を貰い駅を出ると目の前が運河だった。
本当なら昼間に着いてホテルまで歩いていくつもりだったけど、夜では方向も分からない。
ベネチアは細い路地の街なので公共機関は運河を通る水上バスのみ。
はて困ったな、、、と思うと40歳くらいの男がどうした?みたいに聞いてきた。
そこでホテルの地図を見せ、ここに行きたいと言うと、ならオレの船で近くまで連れて行ってやろうと言っている。
男は水上タクシーの運転手だった。
疲れていて歩きたくなかったので乗ることにした。
水上タクシーは長さ5〜6mくらい、客席には10人くらい乗れるほどの大きさだった。
声を掛けてきた男が運転をして、もう一人男が乗っていた。
夜のベネチアは綺麗だったけど、写真を撮る元気は残ってなかった。
10分程で船は止まり、ここから奥に行くとホテルだ、と言っている。
値段は?と聞くと「ふぉるてぃ」と返ってきた。
、、、?
メモ帳を出して書いて貰う。
40ユーロ!?
驚いた、約5000円にもなる。
けれど相場が分からない、値段を聞かずに乗ったのも悪いのだからと思い払う。
ボられたのかと考えたけど、後で計算すると一人40ユーロなら高い、けれどこれが何人でも、例えば5人で40ユーロなら一人8ユーロで高いという感じはしない。
結論:水上タクシーには一人で乗らない
ホテルは今までで一番綺麗だった、風呂は無くシャワーだけだったけどこれはイタリアで止まったホテル全部に共通していた。
妹尾河童みたいに部屋を絵に描けば良かったなと思う。
下手だろうけど、それも思い出になるだろうな。
シャワーを浴びて洗濯をして、そのまま眠った。
眠るだけのホテルにここはもったいないなと思いながら、、、




